
💡 ざっくり言うと送ってはいけないと分かっているのに送ってしまう。その正体は意志の弱さではなく、期待を作り出す脳の仕組みです。なぜ「もしかしたら」に動かされるのかと、そこから抜けるための4つの方法を解説します。
分かっているのに、やってしまう
「しばらく連絡しないで」と言われたのに、送ってしまった。
付き合ってもいない相手と、その場の流れで関係を持ってしまった。
結婚相手を探しているはずなのに、結婚には結びつかない人に夢中になっている。
どれも、やる前から分かっていたはずです。それでも止まりませんでした。
これを意志の弱さだと考えると、解決しません。正体は、脳の仕組みのほうにあります。
ここでは、ケリー・マクゴニガルの『スタンフォードの自分を変える教室』を手がかりに、なぜ止められないのか、どうすれば止まるのかを整理します。
ドーパミンは、快感ではなく「期待」を配る
こうした行動には、ドーパミンという物質が関わっています。
ドーパミンは快楽や幸福感をもたらす物質だと説明されることが多いのですが、実際はそうではありません。
マクゴニガルによれば、ドーパミンが与えるのは「期待」だけです。そのあとに来るはずの快感や満足感は、与えてくれません。
この一点が、すべての説明になります。
電話をすれば嫌われると分かっている。それでも「もしかしたら、ちゃんと説明すれば分かってもらえるかもしれない」と思った瞬間、ドーパミンが出ます。そして、指が動きます。
付き合ってもいない相手とそうなってしまうのも、その先に何かを期待しているなら、同じ仕組みです。
ここで気づいてほしいことがあります。
期待は、行動させるところまでしか面倒を見てくれません。送ったあとに残るのは、後悔や虚しさのほうです。「期待していたときがいちばん気分がよかった」――多くの場合、そうなっています。
ですから、コントロールすべきは感情ではなく、「期待によって突き動かされる行動」のほうです。
社会そのものが期待を作りにきています
やっかいなのは、いまの社会がこの仕組みを利用する方向に進歩し続けていることです。
手元の端末を、暇さえあれば見てしまう。その先に、好きな人からの連絡や、うれしい反応があるかもしれないと期待するからです。
「未読」の赤い表示。件数の数字。あれは偶然ああなっているのではありません。期待をあおるために設計されています。
理由も単純です。人の脳にドーパミンを出させることができれば、その相手はそのサービスに依存し、使い続けます。だから世の中は、私たちに期待させ、動かそうとし続けます。
さらに、「何かに期待して行動するのはよいことだ」という空気まで作られています。我慢することは悪いこと、期待して動くことは前向きなこと。そう言われ続ければ、消費は活発になります。
その結果、私たちは常に何かに期待している状態に置かれています。
恋愛でうまくいかないとき、自分を責める方が多いのですが、環境のほうがそう作られているという前提は知っておいてください。そのうえで、対策に入ります。
振り回されないための4つの方法
① 期待を作ってくる場所から離れる
まず、物理的に距離を取ります。
□ 端末や交流サイトから、一日のうち何時間かは完全に離れる
□ 買い物のサイトやニュースのサイトから離れる
□ 「このあと衝撃の展開が」といった、続きを期待させる番組から離れる
一日じゅう期待し続けていると、それだけで消耗します。そしてその状態が続いている人ほど、誘惑に負けやすくなります。
できるだけ静かなところに身を置いてください。
そして、ここに自分の状態を測る目安があります。
その静けさが、退屈で苦しいと感じるかどうか。
苦しいなら、ドーパミンが出す刺激のほうに依存している可能性があります。その状態で恋愛の判断をすると、たいてい間違えます。
② 期待している自分に気づく
次は、意識の持ち方です。
何かを期待して動こうとしているとき、そこにはドーパミンが関わっている。そう考える習慣をつけてください。
連絡を確認するとき。交流サイトを見るとき。彼に電話をかけたくなったとき。その瞬間、何かを期待していませんか。
この感覚は、わくわくというより不安に近い期待として現れます。落ち着かない、確かめたい、早く知りたい。そこに騙されないでください。
効く方法があります。
期待にかられて取った行動を、ノートに書き出してください。そして、そのあと何が起きたかを書き加えてください。
送った。返事は来なかった。もっと不安になった。
行ってしまった。そのあと連絡が減った。
これを何回か書き溜めると、はっきり見えてきます。望んだ結果が起きていないなら、その期待は罠です。
感情に対して感情で抵抗するのは難しいものですが、記録は残ります。迷ったときは、自分の記録を読み返してください。
③ セロトニンが出る生活に切り替える
疲れているとき、気持ちを立て直したいとき。あなたを癒すのはドーパミンではありません。セロトニンのほうです。
やることは、拍子抜けするほど基本的です。
□ 朝早く起きて、日の光を浴びる
□ 適度に体を動かす(歩く、走るのが効果的です)
□ 食事のバランスを整える
ここで、ほとんどの方がやりません。理由もはっきりしています。
「散歩をしても彼の気持ちは変わらない」と感じるからです。いま抱えている不安と直接つながって見えないので、やる気になりません。
ですが、順番が逆なのです。気持ちが落ち着いていなければ、欲望を制御できません。そして制御できなければ、また同じ連絡を送ってしまいます。
遠回りに見えて、これがいちばん効きます。
④ 「我慢できた」を成果にしない
最後が、いちばん見落とされているところです。
「一週間、連絡を我慢できた」
「今日は誘惑に負けなかった」
こうやって自分のしたことを「成果」として数えると、かえって暴走します。
仕組みはこうです。ここまで頑張ったのだから、と心が帳尻を合わせにきます。そして、その反動で一気に崩れます。
ではどうするか。成果ではなく、自分が取っている「姿勢」のほうに注目してください。
□ 私は彼と復縁したい。だから、自分で望んで連絡していない
□ 私は彼といい関係を築きたい。だから、今日も関係を急がない
違いが分かるでしょうか。我慢しているのではなく、望んでそうしている。
この形にすると、帳尻を合わせる必要がなくなります。我慢には終わりが必要ですが、姿勢には終わりが要らないからです。
まとめ
最後に、ひとつ補っておきます。
ドーパミンが完全になくなれば、人は生きる意欲を失います。何もしたくなくなり、起き上がることもできなくなります。必要な物質であることは間違いありません。
問題は、期待と不安に振り回されて、目の前の関係を壊したり、長い目で見た幸せから遠ざかってしまうことです。
やることは、この4つです。
□ 期待を作ってくる場所から、一日のうち何時間か離れる
□ 静けさが苦しいなら、刺激に依存していると考える
□ 期待で取った行動と、その結果をノートに書く
□ 望む結果が起きていないなら、その期待は罠だと考える
□ 朝日・運動・食事でセロトニンを出す。遠回りに見えて近道
□ 「我慢できた」ではなく「望んでそうしている」に言い換える
いま送りたくなっているその一通は、期待が見せているだけかもしれません。
ひとときの甘い誘惑ではなく、その先にある確かな未来のほうを取ってください。